001. それでもなんでもいいけれど

 それはもう、軽くひくというレベルじゃあない。

「いやあ、もうさ、本当にそんときのエアリスってばめちゃくちゃ可愛くて」

 朝食を作りながらも、ザックス(本日の食事当番)の口から出るのはエアリスのことばかりだ。昨日のデートでどこそこへ行ったら喜んでくれただの、彼女が勧めてくれたケーキが美味しかっただのと、大半は他愛もない話。それだけならいい。それだけなら。けれどそれを、コイスルオトメ並みにオーラを振り撒きながら言う。聞かされるほうはたまったもんじゃあない。おかげで昔のザックスってこんなんだっただろうかと、真剣に考える回数が日々うなぎのぼりに増加中だ。
 クラウド(本日の洗い物当番)はキッチンに立つザックスを見た。目玉焼きを焼いている最中の背中には、幸せがあふれている。それはいいことだ、と思う。日々かつかつだけど、まあとにかく幸せ一番だ。今までの状況を思えば、なおさらのこと。……それでも、この状況は耐えかねる。

「ああもう、本当に幸せだな俺! あんな可愛い彼女がいるって幸せだよな!」

 なあクラウドと振り向くその手元で、フライパンがじゅうじゅうと音を立てている。真っ白く湯気がたっていた。こげ防止に足していた水だと思いたい。きらきらと輝いているだろう(見なくたってわかる!)ザックスの顔より何より、そっちが気になる。だってあれは、ザックスの朝食でもあるけれど、クラウドの朝食でもあるのだ。少しばかりこげくさい気がしても、その現実は認めたくない!

「ザックス、フライパンは」

 ぼそりと訊くと、ザックスはくるりとフライパンの中身を見て、――そのままかたまった。
 びしりとかたまった親友(記憶が間違っていなければ二歳年上のはずだ)を見て、クラウドはもうため息をつくしかない。幸せなのも考えものということだろうか。悩み事がひとつ増えた気がする。
 もう救いようなく漂ってくるこげくさいにおいが鼻をついて、とりあえず朝食をどう乗り越えたものかと再びため息をついた。

それでもなんでもいいけれど、飯作るときは集中してくれ”
そんな切実なクラウドの願いごと
……実はちょっとパラレル風味かもしれないと思ってる
[2008.1.28 執筆/2008.5.7 公開]

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