エウリュディケ

 吹いた風に金糸の揺れるのが、とてつもなくきれいだった。
 光の中に立つそのひとは、まるで女神様のようだった。村の教会で見る女神像なんかよりもずっときれいで凛としていて、美しくて。不信心極まりないけれど、同性ながら見とれてしまって、座り込んだまま立つのも忘れているのではごまかしもきかない。

「ケガはない?」

 呆然としている少女の目の前で、女はゆっくりと振り向いた。涼やかな声は気遣わしげに柔らかく、その美貌にうっすらと笑みを刷いている。なぜかその顔にも声にも覚えがあるような気がしたけれど、それはいくらなんでも気のせいだろうし、なにより自分のそんな心境にかまっているような余裕などない。手にした細身の剣さえも白くきらめいて、息を飲まずにいられない。少女は心臓の立てる音を聞きながら、反射的にうなずいていた。やっぱりこのひとは、作られた神像なんかよりもずっとずっと美しい。
 女のその背後にはいくつものおそろしい抜け殻が崩れ落ちている。女があっさりと、その剣で斬り伏せた異形のものたち。ひとならざるものへと成り果てたそれはそうたやすく倒されるようなものではないはずだったけれど、女は苦もなくやってのけた。奪われる寸前だった少女の命に、手を伸べてくれたのだ。
 やっぱりこのひとは本物の女神様なのかもしれない。

「あの、あなたは」

 問いかけると、女は柔らかく目を細める。慈しむようなあたたかいその雰囲気を、なぜかまた懐かしいと思った。本当にどうかしちゃったのかしら。
 剣を納め、少女の前に膝をついてしゃがんだ女は、やはり同性でもどきどきしてしまうくらいに美しかった。それが心底嬉しそうに微笑む。

「無事で何より」

復活女神様(三女)と転生村娘(元王女)の再会のつもり
[2007.1.25 執筆/2009.9.8 再修正]

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