白く柔らかな、天に透けるヴェールが街を覆う。
今まさに決戦に臨んでいるであろう人たちの、最大の懸案事項がこれで片付いたはずだ。アヤは祈りながらそう思う。
誓約者の結界は、この街を傷つけるすべてを許さない。どんな攻撃も受け止め、空へと還してしまう。世界すら隔てる力を打ち破ることは不可能に近いのだ。
アヤの祈りは、世界の意志そのものの祈りなのだから。
「俺たちにできるのはこのくらいだな」
横でソルがつぶやいた。
街に侵入してくる異形の者たち――もとはただの人であったはずの者たちから、アヤとその近くにいる住民たちを守っている彼は、ほんの少しばかり疲れたようだった。彼は強大な召喚師であるけれど、さすがにこの数が相手では厳しいようで。大丈夫ですかと顔をあげれば、このくらいなんともないと彼は軽く頬を緩めてみせた。
「アルバとアカネが頑張ってるんだ。俺がここでへこたれてるわけにはいかないだろ」
「……そうですね」
すっかり大きくなっただろう少年と、まったく大人になる気配のないクノイチを思い浮かべて、アヤもくすりと笑い声を立てた。それから、まだ会ったことのない彼らの仲間を。その仲間、響界種であるらしい少年の話は、アヤにあの純粋なひとりの響界種の少年を思い出させる。誰よりも強く、最期まで優しくあった少年を。
ここを絶対に守りたいと強く願う。アヤ自身の仲間のため、ここに暮らす人のため、そして彼のように強く生き続ける少年たちの幸せのため。ちらりと見たソルが小さくうなずく。彼もまた同じことを思っているのだと、直感で思う。
その澄み切った願いが、再び降ってきた破壊の光を虚空へ散らした。
(さあ、みんな元気で帰ってきてください)
――わたしたちの大切な二人と、その二人の大切な仲間たちが帰ってきたら、まずお帰りなさいと出迎えよう。
4最終章、誓約者編。ソルとアヤは21歳くらい、でいいのかな
[2007.6.28 執筆]