おめでと! ありがと! こぅん。
女性3人の声にかぶって、打ち合わされたティーカップがやんわりと音を立てる。エスプレッソとダージリンとココアが、テーブルをいっぱいに埋め尽くすケーキ(エアリスやティファの彼氏が見たら顔をしかめそうだ)の甘い匂いと一緒になっていい香りをばら撒いていた。それをそれぞれに傾けて、にっこり。
「んー、おいしー!」
エアリスがにんまりと笑うのを、ティファが苦笑しながら見ていた。平日じゃないと確実に並ぶハメになると評判のケーキビュッフェ(安くておいしい!)で、いきなりコーヒーに舌鼓を打つのを見れば、きっと誰だって苦笑いをするに違いない。少なくとも、3人の中で一番の常識人であろうティファはそうだった。ダージリンを楽しみつつ、正しく絶品のレアチーズケーキを味わっている。
けれど、エアリスはそんなことは気にしない。指摘したら、
「だって、自分で淹れたらこんなおいしくならないもの」
とこうである。それに、シュークリームにかぶりついているユフィだって、いえてる、と同意してしまう。
「店の味って自分じゃ作れないしー。そりゃさ、料理得意なティファはお茶の子サイサイ、ってなもんだろーけど」
にまにまと笑う顔はチェシャ猫みたいだ。そのユフィの頭を、横からのびた手がべしんとはたいた。なにすんの痛い、大げさに騒ぎながらチョコクリームたっぷりのチョコレートケーキを頬張る(シュークリームはすでにおなかにおさまった)。ティファは、リスみたいな顔を真っ黒くてきれいな瞳をきらりと光らせながらじろりとにらんだ。
すでにミルクレープをひとつ食べ終えたエアリスは、ご機嫌で口直しのビスコッティをじゃぷんとエスプレッソにつっこみ、黒い液体をかき回している(その辺の作法を気にかけるほど、残念ながらエアリスは上品なお嬢さんじゃあない)。だって、ティファとユフィが仲のいい姉妹みたいで微笑ましくて、放っておいたって顔が勝手ににんまり笑ってしまうのだ。
「ちょっとエアリス! 笑ってないで何か言ってったら!」
整った眉をきりきりつりあげる親友と、にかにかしている妹分。ふたつの顔を見比べて、エアリスはさあわたしは知らないわとコーヒーを飲みつつにっこり笑う。焼きたてのバウムクーヘンにいちごジャムをつけているユフィに、ちろりと舌を出して見せたりも、する。
いたずらっ子の笑顔でそれに答えるユフィと、もうとため息をつきながらフルーツケーキに手を伸ばすティファ。エアリスもチョコレートでコーティングされたオレンジピールを口にくわえて、ホワイトチョコがおしゃれな抹茶ショートにフォークを刺した。せっかくだから、甘いものを食べつつ甘いお話でも聞き出そうか、なんて少しだけ考えながら。
1400円1時間半食べ放題(+飲み放題)はまだまだ始まったばかりで、テーブルの上のケーキもまだまだたくさん残っている。
最初は「われらが"アリス"のティーパーティ」てタイトルだったモノ
エアリスのお誕生日おめでとう、でした
……一度書いて消えたから、一日遅れてめっさ悔しかった
バイキングやビュッフェで元取れるひとをちょっと尊敬する
[2007.2.8 執筆]