私がその決意を口にすると、彼はこの女は何を言ってるんだと言わんばかりに眉間にしわを寄せた。それは見る者を(というよりもそれが向けられた対象を)少しばかりか大変不快にさせる顔だ。要するに、哀れんでいるのだ。私の頭を。
「ずいぶんと失礼なことを考えてくれるものね」
「多分に現実的な性格の女王陛下にしちゃ、あまりに非現実的な仰りようだったんでな」
「そうね。いろいろと問題があるでしょう。彼ら的には」
彼の眉がぴくりと動く。
私はもう二度と結婚しない。それが私の誓いだ。ダルマスカ最後の王族である私には、本来ありえない誓いだろう。だからこそ彼も私の頭を哀れんだ。ついに狂ったかと。まったく失礼な話。
けれどそれはわからなくもない。私だって、無茶を言っているとは思っている。最後の王族、最後の王女。ただ一人生き残ったダルマスカ王家の女として、私は子孫を残さねばならない。
それをわかっていても、それでも私は二度目の結婚をすることはないだろう。
「私との結婚を望む者はたくさんいるわ」
「星の数ほどな」
「ちゃかさないで」
言ったら、彼は小さく肩をすくめた。まったく。
「そう、望んでくれている人はたくさんいる。でも私の心は彼らを愛することはない」
もちろん、自国の民としてなら愛せる。それはもう、いくらでも。でもその彼らは、私にとって夫になりうる人ではない。
「この心はもう、別の人間を愛してしまったから」
――だから、もう他の人を愛することはできないの。
視線を向けた先で、彼が呆れていた。喪った夫の次に、私が愛した空の住人。
「俺は気ままな空賊だぜ」
「言ったでしょう。私はもう結婚しないって」
自由が好きなこの人を縛り付けるのは、嫌だ。それに、たった1週間でも夫と呼んだあの人の場所を他の人が埋めてしまうことも、嫌だ。だからこそ私は、
「ダルマスカ女王は生涯独身。そしてアーシェという一人の女は、自分の思う道を諦めたりしない」
そんなわがままを笑顔で口にするのだ。
呆れている彼がまったくとため息をつく。そして両腕をのばして、私の体を抱き寄せる。暖かい、と思った。
「思う道を進むのは結構だが、もしガキでもできたらどうする気だ?」
ふと彼がそんなことを言ったので、私は微笑った。
「その時は、ブナンザ家の三男坊をなんとしても捜し出すわ。ラーサーも喜んで協力してくれるでしょう」
にこやかな私に、彼は苦虫を噛み潰したような顔をして、
「箱入り娘がずいぶんとすれたもんだ」
などとわざとらしく息をつく。それを見た私は私で、あらまあとこれまたわざとらしく口元に手を当てた。
「そうしたのはどこの誰かしら」
本気で困り果てた彼が今日はどうにも調子が悪いと言ったので、そのようねと笑っておいた。
列車の中でケータイ直打ち(おかげで所要時間丸2時間)。なんか恥ずかしい
[2008.1.18]