――もしあなたが貴族のままだったら。
――そのときはもっと違う形で一緒にいられたのかしら。
そんなことを戯れに口にする自分が、そんなことなどありえないと誰よりもよく知っている。
この男が貴族だったならきっと、自分にとっては敵だったのだ。……それでもまあ100歩譲って、敵ではなかったとしよう。そう、例えばラーサーのように。敵ではなくともに戦える同志であったとしても、たぶん男は自分の大切なひとにはならなかった。
自分を取り巻くものに牙を立てられないなど、自分の知る男ではない。
――じゃあ逆に、わたしが王族ではなかったら。
――ただの小娘だったなら、あなたと一緒に空を飛べた?
そう言いつつも、やはりそれとて戯れなのだ。きっと王族としての経験のない自分など男の知る自分ではない。そんなただの小娘が、男の大切なものになりえるわけなどないのだ。
結局のところ、どんなにもしもを並べても、今のままの男と自分でなければならないという結論に至るのだが。自分としては。
……なのに男は、そんなのわからねえぜと言って笑う。
「どこでどんな姿で、どんなに違った暮らしをしてたって、結局出会って恋に落ちる……最高のラブロマンスだ」
「ありきたりのね。にしてもまあ、相変わらずロマンチストだこと。呆れ果てるわ」
「お褒めに預かり光栄至極。我が最愛なる女王陛下」
とりあえず、バカと言ってはたいてやった。力いっぱい。
まあその程度には自分も乙女であるらしいと知ったのは、腹立たしくも男に指摘されてのことである。
このふたりはこんなやりとりが書けるから楽しい
[2007.9.5 執筆]