それは朝起きたら枕元に置いてあった。何の変哲もないメッセージカードである。
いつの間に侵入していつの間に置いていったのか、日々の疲れから熟睡していたアーシェにはさっぱりわからない。深夜の警備を顔パスで通るなんてマネはいくらなんでもできないはずなのに、あっさりと、誰にも気付かれずにこうしてメッセージカードひとつを残して去っていった。ただ、まああの侵入者は並大抵の人物ではないから、このくらいやってのけたところで別に驚くことでもないのだけれど。せいぜいが呆れるくらいか。
呆れるといえば、その侵入目的もそうだけれど。この置いていかれたメッセージの中身も、ほとほと呆れ果てたものだった。
(……御身をいただきに参ります、ね)
おそらくは予告状を兼ねたつもりなのだろう。妙にかっこうをつけたがる彼の男がやりそうなことである。しかも、わざわざこの日に合わせているあたり、どうしようもない。
(親愛なる女王陛下だなんて、かっこつけるもいいところだわ)
どうしてストレートに、"今夜迎えに行くから準備して待っていろ"と言えないのか。ややストレートすぎるかつての仲間から少しは学べばいいのに。
まあ、ストレートに気持ちを言えないのは自分も同じと、アーシェはライティングテーブルに載せてあった小さな包みを手に取った。シガレットケース程度のサイズのそれは、先日パンネロに頼んで買ってきてもらったものだ。それを口元に当てながら、メッセージカードをぼんやりと眺める。
(まあ、会ったら大人しくいただかれてなんかやらないくらい言ってやればいいでしょう)
うっすら、頬に笑みを刷きながら。
その日の女王様はかなりご機嫌がよろしかった模様
[2007.2.14 執筆/2007.2.21 修正]